『その冷えた指先に』  
   
(9)



「れいちゃん?」

怒ってる? そう言いながらじっと見詰めてくる瞳がすうっと真摯な光を帯びた。思わずその深い色に吸い込まれそうになっていると、今度は一転、ふわん、と柔らかく微笑まれ。そっと近づいてきた顔の、僅かに伏せられた目元に訳もなくどぎまぎしているうちに、左手を恭しく取られた。

「今日も、冷たいんですね」

静かな落ち着いた声で、そう囁かれ……今、暖めて差し上げますから……指先に軽く触れるだけのキスを贈られて、身体がぞく、と震える。



「んっ……ん……んっ……」

先ほどまでとは明らかに違う意図を持った激しさで、唇も咥内も奪われて。いつの間にかブラウスも下着も肌蹴られ、下半身を覆うものまでその器用な手に取り去られていた。

すでに抵抗できるほど力の入らなくなってしまっている身体では、もう、ただ彼の為すがままにされるしかなく。年下のクセに、とか、ヘタレのフリをして油断させた挙句にこれか、とか、言いたいことは山ほどあるというのに。

電気が点いたままの明るい室内で両足を180度に近いほど広げられても、ゆっくりと花弁の合わせ目を指でなぞられても――恥ずかしさに顔を両手で覆って、ただその先を震えて待っているしかなくて。

「もう、こんなに溢れちゃってますよ?」

勿体無いですね、そう呟いた彼の意図に気づいて、嫌だ、そんなこと、と小さく呟いてみたものの。普段は何気ない気遣いもさらりとできるくせに、こういう時はやたらと欲望に誠実というか、容赦がないこの年下の男は、私の意見なんかきれいさっぱり無視して行為を続行してきて。

視覚が遮断された分、余計に敏感になった身体というのは、その舌の僅かな動きさえリアルに拾ってしまうのだということに気づいた時には…………もうすでに小さな波に幾度も攫われてしまった後。そして今度は、その長い指で一番いいところを激しく擦りあげられて、ああもう、体温なんか確実に2度くらいあがったし、もう十分だから、これ以上は勘弁して欲しい――白く霞がかかり始めた頭でそう願いながら。ただただ、彼の思うがままに高められて。

「んっ、やっ…や……いっ………くっ……」

自分の花が、彼の指を離すまいとざわざわと蠢いているのを感じて、どうにも居た堪れない気分に陥っていく。これほどまでの急展開とはいえ――呆然としているうちに、こんな行為まで許しているなんて。

今さらながら、流されやすい自分に、ほとほと呆れる。

(チガウ。ソウジャナイ)

拒絶するつもりなら、いくらだって方法があるというのに。それをしない時点で……自分で望んでいる、といことだ――この人との、関係を。あれだけ、痛い目にあっても。



「あっ、やっ、ふみ……っ……ぁん、んっ……や……ぁ……っ」

片足だけ肩に担がれた格好で思うがままに攻め立てられて、もう意識は半分何処かへ行っていた。



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