「…んっ」


 くちゅ。


「はぁ…っ……ぅ」







 ぴちゃ、


「ん……ふ」





「……う…ぅっ……んっ」









 もう……どれくらい経ったのだろう。








The last ...?     @








 時間どおりにこの部屋のドアを開けて、ああ先生、今日は寒かったでしょう、もう、手袋またしてこなかったんですか、手が真っ赤になって氷のように冷えてますよ、と、痛いほど冷えていた両手を、彼の大きな手ですっぽりと覆われて。そのまま、口づけられて……

「……や、」

 キス、と言うよりももっと別の淫猥な行為のような、ねっとりと濃厚なその舌と唇に、それからもうずっと……翻弄されている。





「は、……っ……ぁ」

 ぴちゃぴちゃ、ちゅっ。くちゅっくちゅ。淫靡に、部屋に響く水音に、荒い吐息。

「ぁっんぅっ」

 最初、ゆるゆると体中をめぐっていた疼きが。彼の舌が敏感な場所を暴きだす度に、強さと深さを増して、

「……も……っ…」

 もう……体中を暴れまわる疼きにまともに立っているのも辛くて。
 体が震え始め、目尻に涙が溜まっていくのを感じた。





「…み、……く………」



 限界を訴えようにも、口は塞がれており。両手もやんわりと、でもしっかりと拘束されているせいでどうにもならない。くちゅくちゅくちゅ、と音を立てる変幻自在な舌に咥内を丹念に舐られて。



「ぃ………っ、……っぁ、ぁっ……」



 とうとう、体中に震えが走り、がくがくと力が抜けた。 
 その瞬間、私の両手を暖めていた彼の両手は背中に回り、ぎゅっと痛いほど抱きしめられ、

「かわいい、れいちゃんっ」

 ちゅっ、とこれまでさんざん貪られていた唇に、愛らしいおまじないのようなキスが落ちてきた。それが何だか妙に気恥ずかしくて俯いていると、まだ震えの余韻の残る体を意外なほどの力で軽々と抱き上げられ、ベッドにストンと座らされた。

「キスだけで、そんなに感じちゃうんだ?」
「……うる…さ……ぃっ」

 照れ隠しに乱暴な言葉を投げたつもりが、少し震えたそれは完璧に涙声で。

「もー、ほんとーに泣き虫なんだから♪」
「……なに……も…………泣くまで、しなくても……っ……」

 恥ずかしさで耳が熱くなっているところを、嬉しそうな顔で覗き込んでくるから、その視線を避けようと目を閉じれば、頬を温かいものが流れ伝って。……余計に居た堪れない気分が増した。





「だって、外は寒かったでしょ?」

 あんなに指先まで冷たくなっちゃって。だからね、暖めてあげなきゃ、と思って。うつむく私の、左耳あたりの髪を撫でながら、右の首筋に唇を這わせる不埒な生徒は、わざと溜息交じりで囁いてくる。

 その熱い息の感触に、びくり、と反応してしまう自分が嫌だ。

 これでは。また今日も、まともに授業にならない。私は、彼の家庭教師として、彼の両親に雇われて、……ここに来ているというのに。





「勉強のことは気にしないでって、いつも言っているでしょう?」

 こちらの心を読んだかのように、彼が甘く囁く。
 少し掠れているのに不思議と響きのある声で、年齢のわりに落ち着きのある話し方で。

「だって、外でデートできないんだから、仕方がないでしょ?ちゃんと前回の課題だった小論文はやってありますから、お家で添削して来てくださいね」

 右の耳に熱い吐息と濡れた舌先で、言葉を注ぎ込まれて。……背筋を中心とした身体の奥深くの疼きが一層強まる。もう、私に限界が近いということくらい、わかっているはずの彼は、耳朶と、そのすぐ下にある私の弱いところを鼻先で、唇で、巧に刺激しながらさらに話し続ける。

「僕がずっと学年トップを維持してること、この間も両親は、先生に感謝してるって言ってましたよ」
「……ぁ……ふっ…………で、も……っ…そんなの、私のせいじゃ、ない……し」
「どうして?だって本当のことでしょう?」

 そう言いながら……眼鏡を外しているせいで余計に深みを増して見える漆黒の瞳に上目遣いに見上げられ、にっこりと優しく微笑まれた。

「れいちゃんに出会わなかったら、僕はずっと「平凡」で「普通」でつまらない平均点の生徒を演じ続けてましたよ?もしかしたら、一生、そうやって生きていたかもしれない」

 ぜんぶ、あなたのおかげです。

「僕の前に現れてくれて、恋人になってくれてありがとう、……れいちゃん」

 じっと迷い無く見つめてくる視線が、温かくて、嬉しくて、イタイ。せっかく必死に下唇を噛んで堪えていたのに、

「……ぅっ」

 呆気なくまた涙が溢れた。

「も〜〜〜、れいちゃん、ってば。大丈夫だから、泣かないで? ね?」

 まるで幼子をあやす様にふんわりと抱きしめられて、頭を撫でられて。
 今度は、ちゅう、と音を立てて溢れる涙を吸い取られた。





「愛してる、大好きです、………ずっと、僕と一緒に……いてくださいね、」

 またいつものように、……愛おしげに頬擦りされ、囁かれて。

「……そんなの、ぜっ」

 絶対に無理だから、と、可愛げのない言葉を吐き出そうとした口を、再び温かくて柔らかくて容赦のない唇に塞がれ。抵抗する心など、すっかりドロドロに溶かされてしまった私は。

 セーターの上からブラのホックを外していった器用な手にすべてを委ね、目を閉じた。











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