The last ...? M
すでに季節は弥生三月とはいえ、公園のベンチは冷たくて硬くて寒くて。涙さえ出ない私は、ただもう、ひたすら呆然としていた。
糸が切れたように、というのだろうか……彼に真実を問い質そうと興奮していた気持ちはどんどん小さく縮んでいき、かわりにどうにも消せない寂しさが込み上げてくる。
――天涯孤独。
その事実が、これほど重く胸を締め付けてきたことは……これまで一度も無かった。真実を知らされたあの時でさえこれほどの寂しさは感じなかったというのに。日本での生活しか記憶にない私にとって、調査書の内容は逆にあまりにも現実離れしていたせいかもしれない。そこに書かれている少女と自分が同一人物だとは、なかなか信じられなかった。
貴史くんの――あの温かい腕は、幻想だったのかもしれない、そう思うと身体が震える。あの調査書が本当なら……私みたいな女は軽蔑や同情こそすれ、恋人にしようなどと思う訳が無い。
『あいつにさんざん玩具みたいに遊ばれて、……捨てられる。っていうか、強制的に解雇されてきたらしいんだよね。』
清水君の言った言葉が胸に突き刺さる。他の人よりも長く続いたのは、少し毛色が違って面白かったからなのだろう。きっとそうだ。
……きっと。
そう思った途端、じわ、と視界が滲んだ。
「…あ……雪………」
どうりで寒いと思った……特に誰が見咎めるわけでもないのに、言い訳めいた独り言を吐いている自分が何だか可笑しい。3月に降る雪は、なごり雪……だったか。
ひら、ひら、と明るい薄鼠色の空から舞い降りる雪は……冷たいのに、やさしくて。
それはまるで、天から降って来た天使の羽のようで。
「……やっぱり、さすがに寒いな。」
やっとベンチから立ち上がる気力が戻ってきた私は、ほとんど機械的に家路を急ぎ。電車の窓から見える景色をぼうっと眺めながら、頭はひたすら調査書の内容を反芻し続けていた。
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すみません……先に謝っておきます。m(__)m
これからは少々辛いお話が続きます。
暗い話を読みたくない方は、これ以上先へはご遠慮ください。
大丈夫、という方は、自己責任でお進みくださいませ。
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