The last ...?     (24)








「……写真?」

 落とした視線の先にまず見えたのは、どこかの建物のエントランスに、一組の男女が一緒に入り口に向かう後ろ姿。小柄な女性は、背の高い隣の男性を見上げて何か言おうとしているようにみえる…仲睦まじいカップルのように見えなくも無い…

 嫌な予感にかられつつ、重なり合っていてよく見えないその他の写真を確かめようと震える手を伸ばした。

 どうやって撮ったものかかなりピントがズレてぼやけている一番上の写真は……よく見てみれば……数日前、バイト先で怪我をした私が清水君に連れられて行った例のホテル……のようだった。

 …まさか?

 同様に他の写真もあまり写りは良くない……だが。アップで撮られた、その背の高い男性の横顔は――紛れも無く清水君のもの。また、引き伸ばしでもしたのだろうか。さらに画像の荒い、繋いだ手元(実際には私が手首を掴まれているが、それは巧妙につけられた角度で見えないようになっている)の写真……どれもこれも、恋人同士のデートを暗示するような、断片の記録だった。

 そして最後に出てきた、一人でうつむき加減に出てきた女を正面から捉えた写真は一番鮮明で。これは誰が見ても私だということが一目瞭然。



「どうしたの、そんなに驚いた?」
「これ…… どう、し… 」
「どうして、こんな写真がって?それはですね、僕の応援に来ていたセンセイのことを覚えていた栢櫻(はくおう)の子が、偶然見つけたらしいですよ。あのホテルが建ってる通りが、ウチの学校の通学路だって、もしかして知らなかったの?」
「……」

 そんなこと、知るわけない。でも……これが今日の理由だということはよくわかった。彼は、この写真の真偽を確かめようとしていたのか。

「それとも、わざと?…黙ってないで、何か言ったら?」

 イライラとした声は、清水君との仲を疑っている。それなら。この機に乗じて、利用させてもらおう。そう決断し、きつい視線で彼を見据え。用意していた言葉を口にした。

「……もう、恋愛ごっこは終わりにしよう。」

 言った途端、彼を取り巻く温度がぐっと下がったような錯覚。怖い。彼に嫌われるのは……怖い。だが、ここで恐怖に負けるわけには行かない。彼を――私から、解放しなければ。


 ワタシハ、アナタナンカ、ゼンゼンスキジャナイ。
 イママデアナタノコト、イチドモスキダトモアイシテルトモイッタコトハナイデショウ?


「私は……わたしは、……あ、あなたみたいな、メガネで、がり勉で、……傲慢で我侭なお坊ちゃまの相手は、も、うっ、たくさん、っ」

 用意していた言葉よりも、清水君と比べたほうがダメージが大きいかと思い直し、彼と反対なところを羅列しようとして……途中でわけがわからなくなった。


 ワタシハネ、タダ、オカネガホシカッタダケ。
 マリカノタメニ、オカネガ、ヒツヨウダッタダケ。


 ひどく険しい顔をした貴史君に、恐ろしいくらいの力でいきなり引き寄せられ。続くはずだった言葉は――宙に浮いた。














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