The last ...?     (29)








 3日間のNY出張の最終日。プレゼンの成功を祝うという名目で、今当地で流行っているというディスコという場所に連れてこられた。はっきり言ってこういう場所に来たのは初めてだ。入り口で物々しいガードのチェックがあるのにも驚いたが……もっと驚いたのはその店内だった。

 雑多な人種、雑多な服装の――中には相当過激なファッションに身を包み、けばけばしいメイクを施した人もいる――人々でごった返した店内。耳鳴りがするほどの大音量でフロア中に鳴り響いている音楽。目が眩むほど明滅するライト……踊り狂う人々。

『やぁ、ディー!久しぶり!』

 慣れない服装も相まって居心地の悪さに拍車がかかっていた私をよそに、立ち上がり片手を挙げて見せた長身の男性に向かってダイアナが満面の笑みで近づいていく。その颯爽とした後姿をただ呆然と見送った。

 金髪碧眼の美女の見本のような彼女を、誰もが一瞬振り返っていく。両手を広げるように近づきあう二人。軽い音を立てて握手をし、自然な流れで互いの肩を抱いて両頬にキスを交す……私の知らない顔をしたディー。だんだんと瞳が熱を持ち、咽喉の奥が締め付けられてくるような気がするのは、この騒がしい店に充満している紫煙のせいだろうか?

 まるで、私だけ場違いな場所にひとり取り残されてしまったような気分で、ただひたすら仲睦まじい二人を見つめ続けた。





『レイ!どうしたの?こっちにいらしゃい!』

 ぎこちなく固まった私に向かって、彼女がいつもの微笑を向けてきた。姉のような、母のような…慈愛のこもった視線に少し安堵しつつ、どうにか足を前に踏み出した。彼女との3年間でだいぶ緩和されたとは言え、人見知りの私は、慣れない場所や人は苦手なのだ。騒々しいのも好きじゃない。だが……それを知っていてあえて合わせようとしないのがまた、彼女の私への愛情だということも今はわかっているつもりだ。

『紹介するわ。…ロブよ。ロブ、この子がレイ』
『やあ。はじめまして。本当にかわいい子だね、ディー』

 ウィンクまでついた軽い調子で彼――ロブは意味深な笑いをディーに投げかける。

『……はじめまして、モチヅキ・レイカです。』
『あらどうしたの、そんな顔して』
『そんな顔も何も…』

 確か、事前の説明によれば、今私が目の前にしている明るい栗色の髪をしたこの男は、ディーの元夫だ。離婚してからもいい友達なの、と確かに彼女は言っていたが……それにしてもこんな、キスとかハグとかを自然とやってのけられる神経が信じられない。もちろん、キスと言っても本当にしているわけではない。挨拶としての、形だけの、キスだけれど……それでもやはり、自分には不可能というか不可解というか。

『だいじょうぶだよ、俺とよりが戻ったらどうしよう、とか心配しなくても』

 僕は僕で、再婚してるしね。訳知り顔の彼の台詞に、私たちの関係が知られていることを悟って、一気に顔が熱くなった。















もどる/TOP/次へ







*このお話の設定は大体80年代後半なのでクラブじゃなくて、ディスコなんですー。(笑)






Copyright (c) 2007 rosythorn All rights reserved.





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送