The last ...?　　　　　（２７）









「は…っ…」

　先ほど後ろからいきなり指を挿入されてその存在をはっきりと意識させられた場所には、ぬめりのある液体を塗りこめるように揉み解され、ひやりとした細長いバイブレーターとかいう器具が埋め込まれた。

「ゆっくりと時間をかけたから、痛くないでしょ」

　確かに彼の言うとおり、痛みは無い。が、感じたことの無い質感で身体が開かれていく違和感に、自然と背中が仰け反る………

「はい、今度はこっち向いて」

　そう言いながら仰向けに私を寝かせ、両足を肩に担いだ彼は、ひも状の下着をそのまま横にずらし……どくどくと脈を打つように昂っている芽に顔を近づけた。彼の舌が襞をなぞり、唇が芽を吸い上げ、歯を立てる。私の敏感な場所は、容赦なく苛め抜かれ。………意識が、飛んだ。



「はぅっ」

　朦朧とした意識を引き戻したのは、彼の楔に貫かれた衝撃だった。いきなり奥深くまで突き上げられ、息が止まりそうになる。

「ティーバックって、こういうとき便利なんだよね。ほらっ、こうしてもっ、バイブがはずれない」

　ブーーーン、と微かにモーターの音が聞こえてきた。バイブレータのスイッチが入ったらしい。……身体の中で、彼のものとは別の質量がうねる感覚。

「ぁあああ……ぁっ、ああ゛っ」

　これまで一度も、誰にも――自分さえ触れたことの無い場所に未知の刺激を送られ。同時に。最後の最後に突き上げられたことが数度あった以外、ほとんど経験らしい経験のの無い最奥を攻められ……意味を成さない声がとまらない。





「あっ……あああぁ……ゃぁぁ……」

　この時の私は、恐らくは行き過ぎた快感のせいで……恥も、外聞も、どうでもよくなってしまっていた。どこかで盗聴器からの声を拾っているかもしれない彼の継母の存在さえ、すっかり意識から消えていた。

　彼の作り出す嵐のような快感に身を任せ、流され……ほとんど無理やりに近い強引さで高みに昇らされ、落とされているのに。なぜか……どんどん乾いていく。飢えにも似た切実さで願うことは、ただひとつ。


　キスして、欲しい……
　乾いた唇に、いつもの、温かくて優しい……キス……がほしい。



　だが、そんな甘い願いは、

「へぇ〜こっちはハジメテなのに、そんなに感じるんだ。やっぱり先生って、淫乱だよね」

　私を詰る、彼の冷たい声に打ち砕かれた。

「あっあっ」
「ほら、また、ぎゅっと締まってきたよ…」
「…ぃやあああああ」

　あまりにも深いところを何度も突き上げられ、イかされて。閾値が低くなってしまったのだろうか……次々に襲ってくる苦しいくらいの快楽に、がくがくとまた身体が震えだし、涙が止まらない。

「いやっいやいやっいやぁ……」

　完全に押さえ込まれて自由の利かない身体の中で、いま唯一自分の意志で動かせる首を、狂ったように横に振り続けても、彼は容赦してくれない。

　ほとんど絶叫に近い声を上げ続けた喉が掠れ、限界に近いほど早く打ち続けている胸が、痛くて……苦しい。

「ふ……み……っ」

　甘い思い出の詰まった彼の名前を思わず叫びそうになって途中で堪えた。
　今、ここには、……こちらの反応を確認しつつ、ペースをみながら進めてくれる、いつもの優しい「ふみくん」はいない。

　『れいちゃん……だいじょうぶ？　辛くない？』

　そう言って優しいキスをくれた。……そんな彼は、いない。
　追い詰めることだけを目的としているかのような、……ほとんど責め苦のような、一方的に犯すような、こんな……………拷問のような、行為を、知らない。

　涙が……とまらない。


　ああ、もう……これが最後だから、
　キス、して欲しい。
　やさしい……いつもの、………最後に、
　最後の、思い出に……













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